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脈波とは 脈波とはQ&A,監修:医学博士 高田晴子


Q1 脈波は何を表しているのか?
A1 心臓から出て行くひとかたまりの血液が押し出されたときに、大動脈に容積変化(同時に圧変化)が起きます。その波がさらに末梢動脈に伝播して、最終的に指先で検出できる波が指先容積脈波です。直感的にみても脈波は、心臓からでる血液の勢い、心臓の収縮と拡張のふるまい、血管壁の性状、血管の分枝の仕方、血管径、生ずる血管内圧、血管運動神経反応、血流反射波などの多くの要因で成り立っていることが分かります。

脈波は伝播の過程で、各局所動脈の容積変化の波動も加わるし、血流が血管を流れるときに生ずる反射波の影響も受けます。ですから脈波は、心臓から出た血流が血管を流れるときの伝導波の集積です。指先容積脈波は指先で測定していますが、指先の毛細血管の血流をみているわけではありません。

1拍の脈波の形は1回心拍出量が作り出す波ですが、指先で検出できる波は、血管系全体のコンプライアンスを表現しているとも考えることができます。血管系コンプライアンスとは血液流量と動脈内圧によって規定される指標です。異なった血管系コンプライアンスは、異なった波形として表現されるので、もし、心臓機能が標準的なものであれば、波形の違いは、血管壁の性質すなわち伸展性や弾力性に大きく依存することになります。

容積脈波と圧脈波は、ほぼ同じ形をしていますので、血管内圧(血圧)によって生ずる波と同様に考えていいと思います。血圧の場合、収縮期血圧と拡張期血圧の差を脈圧というので、脈波は脈圧の血管伝導波であると言ってもいいと思います。
Q2 加速度脈波の加速度とはなに?
A2 加速度脈波とは容積脈波を数学的に二度微分した二次微分波です。そのためにこれまで、習慣的に加速度という言葉が用いられて来ましたが、実際の速度、加速度とは関係がありません。デジタル脈波を2回微分して評価する方法が始まった理由を歴史的にみると、以下の4点です。

1)アナログ脈波はあまりにも不安定で波形計測が困難だった。

2)デジタル化でより安定性が増したが、デジタル波形であっても呼吸の影響を受け、基線は上下に大きく揺れ動き、微妙な変曲点を肉眼でみつけにくく、波の形を決めるのが困難だった。

3)最初は1回微分して、基線を安定させる方法がとられた。

4)次に2回微分して、微妙な変曲点を明確にする方法がとられた。


本機ではデジタル化すると共に二次微分して波形の安定をはかるという方法をとっています。
(現時点の他社製品はマイコンを使ってデジタル化されているが、フィルターはアナログ処理と推測する。)
Q3 加速度脈波の5つの成分波は何を表していると考えればいいの?
A3 加速度脈波の5つの頂点(a点、b点、c点、d点、e点)と原波形との対応をみると、最初のa点は立ち上がりの瞬間で、最後のe点は収縮期の終了する点もしくは拡張期のはじまりです。つまり、脈波の原波形は心臓収縮期と拡張期の2つの波で構成されていますが、微分してできた加速度脈波は心臓収縮期だけの波です。b点は立ち上がりの最初の変曲点に相当し、c点やd点は、b点に続く変曲点ですが、c点やd点は収縮期後期に相当し、とくに反射波の影響を多く受けていると考えられます。

5つの成分波であるa波、b波、c波、d波、e波の持つ生理学的な意味はすべてわかっているわけではありません。

血管膨張速度の変化率が最大の点,血管膨張速度の減速率が極大の点。動脈の伸展性が悪くなると浅くなる。,血管抵抗による反射波の終点。血管抵抗が高くなると深くなる。
現在の共通認識は、b波は動脈の伸展性または弾力性をよく表すことができる指標であること、d波は末梢血管抵抗や動脈の収縮をよくあらわす指標であるということです。
Q4 脈波による動脈硬化性の判定の試みはこれまでもあったの?
A4 脈波で動脈の硬化性を表そうとする試みはこれまでもありました。

1)脈波伝播速度測定:波の形を評価するのではなく、心電図と同期させて伝播速度の差を評価するもの。
2)波形の立ち上がり速度で判断する方法:波形を計測して、Augumentation indexなど一定の指標を作った。(外国にはこのような方法がよく報告されている。デジタル化される前から研究されていた方法で、きれいで明確な波形をとることに苦労があった。)
3)脈波の波形そのものの形を判定する方法:東大の吉村先生らの方法。

3番目がアルテットの原型です。脈波の波形そのものの形を判定する方法についての研究は、これまで多くなされてきたにもかかわらず、各研究者の理論によって測定点はいろいろ異なり、波形の評価方法、動脈の硬化性をどう表現するのかについて、一定の共通認識があるとはいいがたい状況でした。そのため、実際の臨床ではあまり普及しませんでした。
Q5 アルテットの波形評価法の基本は?
A5 脈波とは、動脈内圧変化(脈圧)の伝播の波である。
脈波は、末梢に伝えられる間に波形にゆがみがおこる。
脈波を数学的に微分すると加速度脈波になり、波形のゆがみのパターンがよくわかる。

アルテットは、加速度脈波を新しい方法で評価するものです。加速度脈波は容積脈波の原波形を2回微分した波形ではあるが、原波形評価法とはまったく関係がありません。
アルテットは波形そのものを判定します。そのために波形を定量化して数字で表すという本機独自の方法です。他社、従来機のような波形をパターンで認識して分類したものではありません。
(パターン認識の欠点=あまりに多くある分類境界の波形を、強引に分類すると、肝心な情報が消えてしまう恐れがあります。)
Q6 波形認識のための定量化はどうやるの?
A6 アルテットは、測定された加速度脈波の平均波形を自動的に作り、さらにこの波形を定量化します。

波の形を判定する場合、波の高さは、心臓からでる血液の初期速度および量変化や、指先の皮膚温の影響を受けるので形の評価が一定しません。そこで、波の形を定量表現する方法として、波高比を用いました。例えば、期外収縮の場合には、1回心拍出量が小さいので、その脈拍の波高は小さくなりますが、波の形は他の脈拍と比べて大きく変化しません。指先が冷えていると波高は小さくなりますが、波の形は大きく変化しません

波の形を定量表現する方法:b/a、c/a、d/a、e/aという比を用います。5つの波は、あるフィルター条件のもとでとりだされた波で、指標は便宜的に作られたものです(すべてに意味があるとは限りません)。
アルテットは、定量化のために、独自のb/aとd/aの組み合わせの指標を用いています。
・・・「波形指数」(文献:高田晴子)
「波形指数」は、無限にある波の形を表現する定量化指標です。この数字で無限にある波のパターンを区別します。
Q7 波形指数で波の形を区別することは分かったけど、波形指数で区別された波の形から、どうやって血管系コンプライアンスの評価をするの?
A7 相対評価法:波形指数は波形認識のための指標です。波形指数で加速度脈波の波形を区別して、老化波形であることが分かっても、それだけでは意味がありません。加速度脈波の波形は加齢につれて変化するからです。正常であっても、血管の加齢現象が波形の変化として現れます。そこで、加齢現象による波形変化を、波形指数の年齢別平均値で表しました。

アルテットは18歳以上の波形指数のデータベースを内蔵しており、これを基に、波形指数の年齢別偏差値を血管老化スコアとして表現しました(文献:高田晴子)。
このスコアの値によって、自分の波形が年齢相応の波形指数であるのか、平均からどれぐらいずれて、血管系コンプライアンスが低下しているのかが判断できます。

スコアは偏差値ですから、正規分布の集団であれば、60以上の値を示す人は13.5%ぐらいあることになります。集団が動脈硬化に偏った集団であれば、もっと頻繁にみられることでしょう。
スコアが60以上の場合、他の検査での動脈硬化所見ありとの関連性が強くみられます。スコアが40から60以内であれば標準的な波形です。
Q8 血管老化スコアは測定するたびに変わるの?
A8 脈波の波形は、そのときの被測定者の状態によって微妙に変わります。当然、波形指数も1拍ごとに変わります。だから、
1回測定(18秒間)では、後半10秒間の脈拍の平均波形から波形指数を算出します。測定条件が一定であれば、さらに複数回測定で平均した場合に、その人の基本波形が推定され、最も信頼できる血管老化スコア、すなわち動脈の弾力性評価ができるでしょう。

注意しなければならない点は、脈波の波形には、血管の収縮や拡張が大きく影響するということです。ですから、血管拡張剤の服用、飲酒、寒冷刺激時には測定は不適です。ただし、降圧薬(血管拡張剤)については、逆に、治療効果の確認に用いることもできます。

血管老化スコアの変動を継続して記録すれば、末梢血管抵抗の変化をみることにもなり、ストレスや体調も判断できる可能性があります。(この目的で用いる場合には、Cタイプのソフトを用いて2分間以上の連続測定を実施して、自律神経バランスの情報も、同時に得られれば、疲労やストレス評価できる可能性があります。現在、諸先生方がご研究を進めておられます。)

生理検査ですから、測定管理は重要です:測定する毎に、あまりに変化が大きい場合には、測定条件が整っているかどうか確認する必要があります。部屋の温度管理、刺激的環境防止などに注意して安静時測定を守ってください。測定前の5分程度の安静は結果の安定に効果的です。簡便な検査でも、測定が雑であれば、安定した結果は得られません。
Q9 アルテットの特徴は?
A9

1)18秒で測定できます。

2)USB接続で、パソコンに直接データを取り込みます。データはCSV方式で取り出せます。ソフトタイプによりますが、ID管理ができ、5回まで個人ごとに履歴が見られます。三波形の生データを保存して、必要に応じて検証できます。1拍ごとにb/a、c/a、d/a、e/a値など波形情報が自動保存されており、また、後ほど画像として波形再生もできます。

3)独自のセンサ構造で再現性をアップしています。

4)ソフトウェアによるデジタルフィルター処理でノイズ除去に優れる。

5)一秒間に1000回の時間分解能でなめらかな脈波曲線を描き、解析精度は補間して0.1msecで変曲点の位置など正確に把握できます。

6)30拍から240拍まで測定可能です。

7)血管老化度の指標がでます。平均波形の波形指数から血管老化スコアを導き、自分の波形が年齢相応の波形指数であるのか、どのくらいずれているのか判断できます。

8)血管老化スコアから、患者サービスとして、「血管年齢」も表示できます。ただし、年齢を告げる場合には、スコアの正常範囲について患者に説明をし、血管年齢で一喜一憂しない配慮は必要です。血管年齢を告げる意味は、あくまでも患者の生活習慣改善や治療協力へのモチベーション作りです。

QS1 よく、血がさらさら、どろどろという時、食べ物で是正されるというが、血管老化度はどうか?
AS1 「血がさらさら、どろどろ」というのは、血液が固まりやすいかどうかということで、血管の硬さとは関係ありません。血管が硬い上に、血液が固まりやすければ、血栓による梗塞がおきやすいので危険だということです。血管老化度が高い上に、食生活が悪いのは、リスクが余計に高いので、両方とも是正する必要があります。食べ物だけ変えてもだめです。高血圧治療、肥満解消、糖尿病治療、運動や禁煙などの生活習慣改善を続ける必要があるでしょう。
QS2 長い時間をかけて測定したほうが、信頼性の高いデータがとれるのか?
AS2 基本的にデータ量が多い方が正確な結果が得られます。ただし、測定時に動くと、波形が乱れますので、あまり長時間というのも患者負担を考えてどうかと思います。そのために18秒でも健康管理目的なら充分なようにセンサの性能を上げてあります。また、「手動」ボタン(MAX1分測定)のほうなら、波形の安定を確認してからスタートできます。繰り返し測定:波形に個人差がありますので定期的に繰り返し測定し、個人の波形変動の比較をされると高血圧患者などの治療効果判定や動脈硬化関連疾患の患者の経過管理に有用です。

監修:医学博士 高田晴子
作成:株式会社ユメディカ
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